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小学校の同窓会は、しばらく疎遠になっていた友情を再燃させる。
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彼女、舞雪(マユキ)との絆もその一つだ。
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名前の通り、白くふわりと舞う牡丹雪のように清純で儚いというか、
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学校の初等部で出会った頃から、体が弱くおとなしい少女だった。
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生まれつき脆弱なせいで学校を休みがちなマユキが、クラス内で孤立してしまわないかと危惧した私は、
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彼女が学校に来た際には、必ず一緒に遊ぼうと声を掛けた。
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マユキも私のことをとても慕ってくれて、
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当時『一番の友達は?』と答える場面では、
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即座に互いの名前を連ねるほどの親友になった。
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男勝りでおてんばだった私とは対照的なマユキが、自分にはない魅力を全て兼ね備えている気がして、
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そんな彼女に素直に憧れていた。
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その想いは、今でもずっと変わらない。
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体の弱いマユキが、この間行われた同窓会に出席できるか心配だったが、
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互いに元気な姿を目にして再会を心から喜び合った。
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その同窓会からしばらく経ったある日、マユキが私の家に遊びに訪れた。
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リビングで紅茶を飲んでいると、たまたまそこにキザキさんが現れて、
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キザキ
『…どうも』
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マユキ
『こ、こんにちは…、』
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マユキとキザキさんは、ごく普通に挨拶を交わしただけだった。
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けれど。
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マユキはその一瞬で、キザキさんに心を奪われてしまったらしい。
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いわゆる、一目惚れだった。
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普段は人見知りで恥ずかしがり屋な彼女が、瞳を輝かせながらキザキさんについて訊ねてくる。
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ユヅキ
『…悪い人じゃないよ、むしろいい人かな』
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マユキ
『わあ、そうなんだ』
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ユヅキ
『あ、ときどき意地悪かも』
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マユキ
『ふふ、そうなの?』
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ユヅキ
『ちょっと可愛いところがあるかな…』
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ユヅキ
『万人受けするイケメンなのも認める』
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マユキ
『うん、素敵だよね』
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思いついたキザキさんの印象を並べれば、
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マユキは嬉しそうに微笑みながら相槌を打っていた。
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以来、マユキは、ちょくちょくうちに顔を出すようになった。
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キザキさんが家にいるときには、さりげなく会話できるように促してやる。
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マユキの楽しげな笑顔が純粋に嬉しかった。
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そんな日が何度か続いたある日。
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マユキからとても遠慮がちに、
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キザキさんと一緒に食事に出かけたいが、誘う勇気がない…と切り出された。
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早速、キザキさんに食事の話を持ち掛けると、
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分かりやすく顔を曇らせて、駄々っ子のように私を軽く睨んだ。
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キザキ
『…嫌』
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キザキ
『行きたくない』
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キッパリと放たれた否定文は、キザキさんらしい正直な答え方だと思う。
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だけど、このままだとマユキの願いを叶えてあげられない。
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なんとか懇願してみると、キザキさんは渋々ながらも条件付きで了承してくれた。
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キザキ
『食事に行く日は、ユヅキちゃんも一緒に行くこと』
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キザキ
『三人じゃなきゃ、行かないから』
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ユヅキ
『……分かりました』
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そう返事をしたけれど、
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それを守る気はなかった。
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……もしも。
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親友と呼べる大切な友達と自分が同じ人を好きになったら、
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私ならどうするのだろう。
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ユヅキ
……
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その答えは、もう見えている気がした。
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