-
ゆな
ユヅキ先生、<赤い糸>って知ってる?
-
ユヅキ
<赤い糸>…、
-
ユヅキ
うん、知ってるよ。
-
ゆな
そのピンキーリング、<赤い糸>の代わりだよ。
-
ユヅキ
…そうなの?
-
ゆな
ユヅキ先生と恋人のお兄ちゃんが、うちのパパとママみたいにずっと仲良くいられるといいなと思って、
-
ゆな
一生懸命作ったんだ。
-
ユヅキ
…そっか…、
-
ゆな
そのピンキーリング同士にはね、
-
ゆな
見えない<赤い糸>が繋がってるんだよ。
-
ゆな
そうだよね、ママ。
-
視線を巡らせて同意を求めたゆなちゃんに、お母さんも優しく微笑んで見せた。
-
ユヅキ
(だから、私が恋人と一緒に来ることにこだわってたんだ…)
-
『恋人と来てね!』…と招待状に添えたゆなちゃんの言葉を思い返して、
-
その理由を今度こそ深く理解する。
-
<赤い糸>と称されたこの二つのリングには、
-
私のささやかな幸せを健気に願う、彼女の気持ちが込められていたのだ。
-
キザキ
僕たちって、
-
キザキ
やっぱり<赤い糸>で繋がってるのかもしれないね。
-
ユヅキ
…、
-
不意に、嬉しそうに耳打ちしてくるキザキさんの言葉にトクリと鼓動が波打つ。
-
ユヅキ
……、
-
ユヅキ
(赤い糸、か…)
-
実際に繋がっている人物は誰なのか、今はまだ知る由もないけれど。
-
小指の赤いリングをそのままに苦笑だけを返した私は、
-
以前とは違った想いを抱いていることを心の隅っこで感じ取っていた。
-
ユヅキ
……
-
ユヅキ
(…今までなら…、)
-
そう、今までの私なら、
-
『繋がってないです』と即座に否定していたはずなのに。
-
キザキ
……ユヅキちゃん?
-
キザキ
どうかしたの?
-
ユヅキ
…いえ、
-
ユヅキ
別に、なんでもないです。
-
もしも、
-
<赤い糸>を手繰り寄せた先にキザキさんがいたとしても…
-
今はもう、きっと嫌じゃない。
-
むしろそれを思い描いた瞬間、心には甘く切ない痛みが走る。
-
ユヅキ
…、
-
初めて知るその不思議な感覚。
-
人はそれを、
-
<恋>と呼ぶのかもしれない。
-
Vol. 10 END
タップで続きを読む