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皆様、本日は、ご鑑賞いただきありがとうございました!
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ユヅキ
…、
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園児たちの見事な演技と成長を感じさせた姿に拍手が鳴りやまない中、
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物語の進行役を務めていた担任の先生が舞台袖からマイクを手に現れたことで、
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改めて舞台に視線を投じる。
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さて、
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この物語には、ちょっとした続きがございます。
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先ほど無事に魔女から取り戻した【心のかけら】が詰まっている宝箱ですが、
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実はこの宝箱の中には、
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妖精や勇者たちからのプレゼントが入っています。
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ステージから観客席に向けて手を振る園児たちはそれぞれに、
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両親や祖父母に笑顔と視線を注いでいて、
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ゆな
——!
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ユヅキ
……、
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そんな中で、
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ゆなちゃんは大きく手を振りながら向日葵のような明るい笑顔をまっすぐに、
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私に向けていた。
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ユヅキ
…、
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思わず笑顔で手を振り返した所作に重なるように、
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担任の先生の
溌溂 とした声が再び会場内に行き渡る。
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妖精と勇者たちから、
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今年、彼らがとても感謝した人たちに贈ります!
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名前を呼ばれた方は、舞台の上までどうぞ!
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促され、順番に舞台に上がった人たちは、彼らの子どもだったり孫だったり、様々な絆で結ばれている存在なのだろう。
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園児たちは、感謝の気持ちを込めて書いたという手紙を元気いっぱいに読み上げ、
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手作りのプレゼントを彼らに手渡していた。
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キザキ
…きっと、ゆなちゃんは、
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キザキ
キミに感謝の想いを伝えるために、ここに招待してくれたんだね。
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ユヅキ
…え、
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不意に届いたキザキさんの言葉に動揺を露わにして、
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謙遜しながら首を振る。
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ユヅキ
私じゃないでしょう、
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ユヅキ
お母さんやお父さんの名前を呼びますよ…、
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キザキ
違うでしょ。
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キザキ
それなら、わざわざ病院まで招待状を届けに来る必要なんてない。
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ユヅキ
…、
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ユヅキ
確かに、そうかもしれないですが…、
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キザキ
でしょ?
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ユヅキ
……、
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ユヅキ
——ど、どうしよう、
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ユヅキ
もしかして、やっぱり、私なんですかね…?
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キザキ
うん、きっとそう。
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ユヅキ
…、
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キザキ
あは、緊張してる?
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ユヅキ
しますよっ…、
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目を見開くようにして畳み掛けたそのとき、
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ゆな
藤沢ユヅキせんせー!
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会場に響くゆなちゃんの元気な呼声に、ビクリと跳ね上がったように腰を浮かせた。
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ユヅキ
(ど、どうしよう…、)
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ユヅキ
(やっぱり呼ばれちゃった…)
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私なんかでいいのだろうかと手に滲む汗を握りしめつつ、
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押し寄せる緊張で顔も引き攣ってしまう。
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キザキ
ほら、頑張って行っておいで。
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ユヅキ
ほんとにいいんですかね、私なんかで…、
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キザキ
なに言ってるの、キミじゃないとダメなの。
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キザキ
ゆなちゃんの想い、しっかり受け止めてあげなきゃ。
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ユヅキ
…、
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キザキ
大丈夫だよ、頑張って。
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ユヅキ
……
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さりげなく私の頬をサラッと撫でたキザキさんの手の温もりに背中を押されて、
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心を決めた私は静かに頷いた。
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ユヅキ
……、
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それでも、今にも引き返したいような恐縮した気持ちは消し去れないまま、
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加速する鼓動を落ち着かせようと、小さく呼吸を整えながらステージに上がる。
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ユヅキ
(論文の発表よりも緊張するよ…)
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こっそり思いながらゆなちゃんの前まで歩み寄ると、
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私を見上げて微笑む彼女はスポットライトの光のせいだけでなく、
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とても利発で輝いて見えた。
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ゆな
ユヅキ先生、今日は来てくれてありがとう。
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ユヅキ
こちらこそ、招待してくれてありがとう。
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ゆな
今から、先生へのお手紙を読むね。
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ユヅキ
…うん。
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ゆな
『…藤沢ユヅキへ。』
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ゆな
『ユヅキ先生は、わたしの命の恩人です』
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ユヅキ
…、
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ゆな
『車で事故をしたとき、ユヅキ先生がわたしの担当の先生じゃなかったら、』
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ゆな
『今日みたいに、みんなと発表会に出ることが出来なかったと思います』
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ゆな
『「ユヅキ先生が、ゆなの命を最後まで諦めずに助けようと、一生懸命頑張って助けてくれたんだよ」…と、』
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ゆな
『わたしが目を覚ましたとき、お父さんとお母さんが教えてくれました』
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ユヅキ
……、
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ゆな
『ユヅキ先生、本当にありがとう!』
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ゆな
『わたしは、大きくなったら、ユヅキ先生みたいな立派なお医者さんになりたいです!』
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ユヅキ
…っ、
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会場内は、割れんばかりの拍手喝采で。
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突然魔法をかけられたような、茫然とした気持ちのまま…
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けれど、とても胸が熱くて。
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ゆな
ユヅキ先生、これ、お手紙と…、
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ゆな
あと、これは、わたしが作ったプレゼントだよ!
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ユヅキ
…、ありがとう…!
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ライトピンクのセロファンで包んである小箱を受け取り、大切に胸に
抱 いた。 -
感激で胸がいっぱいになるということは、人生の中でそう頻繁に体験できることではない。
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どうしようもなく熱い想いが
胸間 に溢れて、視界が急速に歪み始める。
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ユヅキ
(…ああ、ダメだ、泣いちゃう…)
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喉奥がツンと痛むのを感じながらゆなちゃんに向けて満面の笑顔を返せば、
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同時に目尻から一筋の涙が零れ落ちて、
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もう一度、
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今度はわずかばかり涙声に染まる声を絞り出す。
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ユヅキ
本当にありがとう、ゆなちゃん…。
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幼い少女の感謝と抱く目標が、心の根っこの部分に優しく響いて。
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医師としての私を強く肯定してくれた<小さな妖精>に、
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心からのありがとうを告げた。
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