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ユヅキ
なっ…、
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ユヅキ
何言ってるんですか、
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ユヅキ
手なんか繋いだら、変に思われますよっ。
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キザキ
いいじゃない。
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キザキ
今日の僕たちは恋人なんだから。
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ユヅキ
あくまでも(仮)の、
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ユヅキ
偽装の恋人ですからっ。
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キザキ
偽装でも、
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キザキ
今は恋人でしょ?
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ユヅキ
とっ…、
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ユヅキ
とにかくダメですっ。
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キザキ
えーっ、つまんないなあ。
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ユヅキ
つまらなくないですっ。
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ユヅキ
(…不覚にも、またドキドキしてしまった)
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やっぱり、この人はいちいち心臓にくる。
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内心で平常心を立て直しながら、その後あまりキザキさんとは目を合わせることなく、
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会話もそこそこに発表会までの時間を過ごした。
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︙
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いよいよ、ゆなちゃんのクラスが出演する舞台の開演時間になり、
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私とキザキさんは招待状に書かれている座席番号を探して腰を掛ける。
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普段は何の変哲もないパイプ椅子が、リボンやペーパーフラワーで可愛くデコレーションされていて、
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招待客をもてなしてくれる想いが伝わるようで心がほっこりした。
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今からみんなで魔女が住む城へ行き、魔女を封印するのです!
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みんなで力を合わせれば、
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必ず、【心のかけら】を取り戻すことができるでしょう!
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マイク越しの担任の先生の声が会場に響き渡る。
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舞台劇の脚本は先生のオリジナルで、
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優しさの根底となる【心のかけら】が魔女に奪われ、それを取り戻すために奮闘する勇者や妖精たちの物語。
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ゆな
さあ!
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ゆな
みんなで力を合わせましょう!
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よーし!行くぞー!
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ゆな
えいえい、おーっ!!
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ゆなちゃんの良く通る声と愛らしくも明達な表情が、物語全体を引き締めて彩ってゆく。
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それは、まだ幼い園児たちが演じているという現実を忘れるほどの出来栄えで、
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すっかり感情移入した私は、
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彼らが紡いでいくストーリーの行く末を舞台下から熱く見守っていた。
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…やがて、物語は佳境に差し掛かり、
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よしっ!みんな!今だっ!
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《魔女》
…ウゥ、ググッ…、 -
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もう少しだっ!
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ガンバレ!!
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《魔女》
ウグッ、 -
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《魔女》
…ギ、ギャアアアーーーァ!! -
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《魔女》
…ッ———… -
ゆな
…!
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*
わーい!!
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ゆな
やったあーーー!!
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舞台奥手の大きなスクリーンに映し出された仰々しい魔女をようやく退治した園児たちは、
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無事に【心のかけら】が詰まった宝箱を取り戻し、物語は終演を迎えた。
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ユヅキ
…、
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ユヅキ
(ゆなちゃん、みんなも、よく頑張った…!)
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ユヅキ
(素晴らしかったよ…!)
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感無量で舞台を見つめる私の双眸は、まるで保護者のそれと同じで。
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零れる笑みをそのままに、隣に座るキザキさんに振り向けば、
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すぐに気付いた彼がこちらに視線を寄越してくる。
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キザキ
みんな、とても上手だったね。
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微笑み返してくれた優しい瞳の奥は、
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園児たちの活躍を讃えるように
燦燦 と煌めいていた。 -
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