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『見抜いたわたしって、すごいでしょ!?』
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…とでも言うかのように、
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爛々と輝く澄み切った瞳に射抜かれて一瞬声を失ったが、
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ユヅキ
こ、恋人…っ、
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ようやく、まさかの回答を反復する。
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ユヅキ
(まさかゆなちゃんまで、)
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ユヅキ
(恋人って言うキーワードを出すとは…)
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ゆな
うん!
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ゆな
だって、恋人って感じだもん!
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ユヅキ
…そ、そんなことはないと思うけど…、
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言葉の後ろが頼りなく途切れたところに、
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余裕すら感じさせる声音が遠慮なく入り込む。
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キザキ
さすが鋭いねー。
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キザキ
やっぱり、純粋な子どもにはなんとなく伝わっちゃうのかなあ。
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ユヅキ
な…、
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ユヅキ
何を言ってるんですかっ、
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ユヅキ
余計なこと言わないで、ちゃんと事実を伝えてくださいよっ。
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ゆな
……え、
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ゆな
ユヅキ先生とお兄ちゃん、恋人じゃないの?
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キザキ
恋人に一番近い感じかな。
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大きく動揺した私を他所に、キザキさんは平然と笑顔で言ってのける。
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ユヅキ
訳の分からないことを言わないでくださいっ…、
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ユヅキ
ゆなちゃん、この人はね、
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ユヅキ
ただの居候なんだよ?
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ゆな
うーん…?
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ゆな
えっと、いそ…うろ…?
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瞬きを繰り返して疑問符を散りばめたゆなちゃんに、
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今まで静観していたお母さんがそっと微笑みかけた。
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居候っていうのは、
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*
ユヅキ先生のおうちに、このお兄さんが一緒に住んでるっていう意味よ。
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ユヅキ
…、
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ユヅキ
(それはちょっと、言葉が足りないというか…、)
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ユヅキ
(いや、間違ってはいないんだけど、)
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ユヅキ
(誤解を生む言い回しでは…?)
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改めてきちんと説明しようと口火を切ろうとした横合いから、
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ゆな
そっかあ!
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ゆなちゃんが閃いたようにポンと手を叩いてお母さんを見上げた。
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ゆな
一緒のおうちに住んでるってことは、
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ゆな
ユヅキ先生もお兄ちゃんもとても仲良しさんだね。
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ユヅキ
いや、あの、それはね…、
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*
ふふ、そうね。
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ユヅキ
…っ、
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ユヅキ
(いやいや、お母さん、『ふふ、そうね』じゃなくてっ…)
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ゆな
ユヅキ先生、このお兄ちゃんと発表会に来てほしい!
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ユヅキ
そっ、それはその…どうかな、
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ユヅキ
なんていうか、
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ユヅキ
ちょっと困るっていうか…、
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キザキ
ねえ、発表会ってなに?
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途端にまごついてしまった私を尻目に、
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キザキさんは腰を屈めるとゆなちゃんに目線を合わせる。
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ゆな
今度ね、わたしの幼稚園で発表会があるんだ!
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ゆな
それでね——……
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キザキ
そうなんだ、すごいね!
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嬉しそうに発表会の詳細を話すゆなちゃんに優しく相槌を打つキザキさんは、
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某キッズ番組の歌のお兄さんみたいにとても清々しい。
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その姿を横目に、やれやれと溜め息を吐き出そうとしたが、
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キザキ
分かった。
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キザキ
じゃあ、ユヅキ先生と一緒に行くね。
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キザキさんの言葉に思わずそれを堰き止めた。
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ユヅキ
ちょっ…、ちょっと待ってください!
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ユヅキ
勝手に約束しないで——
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キザキ
発表会のためにせっかく頑張って練習してるのに、
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キザキ
観に行ってあげないと可哀想だよ。
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ユヅキ
そ、そうですけど、でも…、
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ユヅキ
キザキさんが恋人設定っていうのは…、
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キザキ
今のところ一番適任じゃない。
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ユヅキ
そ、それはどうかと…、
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キザキ
じゃあ、他の人と行く?
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キザキ
今すぐ連絡して都合付けてくれそうな人、
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キザキ
ソウタ以外にいるとは思えないけど。
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ユヅキ
…、
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図星を覆せないほど悔しいものはない。
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でも。
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ユヅキ
(…仰る通りです…)
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ゆな
わたしは、ユヅキ先生とこのお兄ちゃんと二人で来てほしい!
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ゆな
来てくれるのすごく楽しみにしてるからっ!
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ユヅキ
……、
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ユヅキ
…分かった。
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結局、ゆなちゃんの咲き綻んだ笑顔にトドメを刺される結果に終わり、
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諦めたように嘆息しつつもゆなちゃんと堅い指切りを交わした。
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先生!
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*
ICUの山下さんの意識レベルが回復しました!
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ユヅキ
はい! 今行きます!
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ユヅキ
…じゃあ、ゆなちゃん、
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ユヅキ
先生お仕事に戻るね。
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ゆなちゃんの頭を一撫でしてから、横に立つキザキさんに顔を向ける。
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ユヅキ
ごめんなさい、
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ユヅキ
もう少し時間がかかりそうなので…、
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ユヅキ
用事があるなら気にしないで帰ってくださいね。
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無意識のうちにそっと笑いかけて、
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白衣の裾を翻し、患者さんの待つ集中治療室へと急ぎ足で向かった。
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