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ゆな
あのね、先生、
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ゆな
わたし、光の妖精やるのっ。
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ユヅキ
そうなんだ?
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ユヅキ
すっごく楽しみにしてるよ。
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ゆな
うんっ!
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ゆな
妖精さんたちは出番が多いから、毎日練習頑張ってるの。
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ユヅキ
そっかあ、偉いなあ。
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ゆな
妖精さんの服もすごくかわいいの。
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ユヅキ
<妖精のゆなちゃん>、ほんとに楽しみにしてるね。
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発表会に出席する約束をした後、母娘を見送るためにゆなちゃんと仲良く手を繋いで玄関ホールに向かう。
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ゆなちゃんとの会話を続けながらエントランスを目指して歩を進めていると、
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ホール中央の自動扉が開き、
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そこからキザキさんが現れて、少しばかりギョッとなった。
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キザキ
…あ。ユヅキちゃん、
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キザキ
ちょっと早いかなと思ったんだけど、迎えに来ちゃった。
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キザキ
…そろそろ上がり?
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ユヅキ
ご、ごめんなさい、
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ユヅキ
まだあともう少しかかります…。
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なんとなく、勝手に気まずい。
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【 藤沢ユヅキ ⇔ 城崎咲也 】
( 恋人同士 ) -
そんな人物相関図が再び脳裏に浮かんで、
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それを消し去るようにささっと頭を振った。
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キザキ
もしかして、頭痛?
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ユヅキ
いえっ、違います、
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ユヅキ
全然、何でもありませんので…っ、
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キザキ
……
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不自然さが漂うその返しをキザキさんが妙に思わないわけがなく、
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ガッツリこちらを注視しながら小首を傾げる。
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キザキ
…体調の方はどう?
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ユヅキ
…あ、えっと、
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ユヅキ
もうほんとに平気です、
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ユヅキ
すみません、心配かけて…。
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キザキ
……ううん。
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キザキ
大丈夫ならよかった。
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ユヅキ
…、
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意外にも追及されずに済んでホッと胸を撫で下ろしながらも、
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口端が引き攣ったようなぎこちない笑みを晒しそうになり、
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悟られまいと慌ててゆなちゃんに視線を移す。
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キザキ
……、
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それに倣うように落とした視線の先にゆなちゃんの姿を捉えたキザキさんは、
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柔らかに目を細めた。
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キザキ
可愛い子、連れてるね。
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ユヅキ
そうなんですよ!
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ユヅキ
この子は以前、私が担当した患者さんなんですよねっ、
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キザキ
…そうなんだね。
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ユヅキ
はいっ。
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ユヅキ
(……ちょっと大袈裟な感じになっちゃったかな…)
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誤魔化しの上塗りで、少し食い気味に言い放ってしまったことに一瞬後悔したが、
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ゆな
佐古田ゆな、6歳です!
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ゆな
こんにちはっ!
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ゆなちゃんの無駄のないストレートな自己紹介が、
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それをすっかりカモフラージュしてくれた。
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キザキ
こんにちは。
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キザキ
<ゆなちゃん>って言うんだ、可愛いね。
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キザキ
僕の名前は、城崎咲也、26歳です、
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キザキ
よろしくね。
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ゆな
よろしくお願いしますっ!
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キザキ
すごくしっかりしてるね。
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ゆな
褒めてくれてありがとうございますっ!
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ドヤ顔混じりの破顔と胸を張るようにピンと背筋を伸ばした幼い風采は
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将来のリーダー性を醸し出していて頼もしく、
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けれどその反面、
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ユヅキ
(うわ…、可愛いな…)
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勢いよく会釈した拍子に揺れるツインテールがウサギの耳を思わせて、
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その愛らしさに彼女の頭をさわさわっと撫でる。
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ユヅキ
私がゆなちゃんくらいのときなんて、
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ユヅキ
大人とこんなに上手に話せなかったよ、ほんと偉いなー。
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ゆな
えへへ…、
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しばらく照れくさそうに微笑んでいだゆなちゃんだったが、
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眼前に立つキザキさんに再び視線を巡らせると、
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下からじっと観察するように彼を見据えた。
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ゆな
……
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ユヅキ
……、
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そんな彼女の姿を見ていると、どういうわけか、
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この場で聞こえるはずのないドラムロールの音が鳴り響く幻聴。
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キザキ
……うん?
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キザキ
どうかしたの?
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自分を見つめてくる愛くるしい双眸に、
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さすがのキザキさんもちょっぴり困惑したように、口元にだけ笑みを湛えて視軸を合わせた。
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ゆな
……
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キザキ
…、?
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ユヅキ
…、
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ユヅキ
(キザキさん…、イケメンだから、)
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ユヅキ
(改めて、『かっこいい!』とか言うのかな…?)
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世間一般の女の子たちが言いそうで、一番的確だと思われる返答をこっそりと推測していたが、
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ゆな
もしかして、
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ゆな
お兄ちゃんは、ユヅキ先生の恋人?
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ユヅキ
(…えっ!?)
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予想外の解答が、ドラムロールの締めのシンバル音の幻聴と同時に告げられた。
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