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アイリ
…体、辛くないの?
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レン
ああ。大丈夫だ。
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レン
仕事が忙しかったせいで、忘れてたくらいだしな。
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アイリ
ふーん…
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どこかじっとりとした視線を投げつけてくるアイリに、
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俺は柔く眦を歪めて揶揄するように見つめ返した。
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レン
なんだよ、
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レン
風邪なら大丈夫だって。
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アイリ
……それならいいけど。
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レン
…怒ってるみたいに見えるぞ?
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アイリ
別にー。
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レン
(……まさかだとは思うが…、)
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レン
もしかして、妬いてんのか?
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アイリ
なんで妬くのっ。
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レン
合コンで、<お兄ちゃんが誰かに取られちゃう>…とか?
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アイリ
違うよっ。
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アイリ
風邪気味だったの知ってるから、普通に心配してるだけ。
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レン
…そりゃどうも。
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レン
(そんなわけねーか…)
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アイリ
……
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ふくれっ面を晒して、目玉焼きの残りを口に放り込んだアイリの力強い咀嚼は
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モグモグと漫画みたいな効果音が聞こえてきそうで、
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俺は笑いを漏らしながら空いた皿を手に取る。
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レン
おそらく帰りは遅くなるから、ちゃんと戸締りして先に寝てろよ?
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アイリ
……
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レン
…どうした?
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アイリ
風邪、ひどくなっても知らないよ?
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レン
平気だって、心配すんな。
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アイリ
そんなこと言って、
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アイリ
この間なんて熱出してぶっ倒れたくせに。
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レン
あれは…、
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レン
仕事で徹夜も重なって仕方なかったんだよ。
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アイリ
ほんとに知らないからね、
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アイリ
出先でしんどくなっても。
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レン
心配ねーって。
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アイリ
あ、そっか。
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アイリ
集まった女の人にいっぱい囲まれて、モテモテの合コンだもんね、
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アイリ
しんどくなってる暇もないよね。
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レン
あのな…、
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アイリ
かっこいい兄貴を持って、
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アイリ
私って幸せ者だなー。
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目の前のアイリは、どこか投げやりとも取れる態度でやや声高に言葉を並べた。
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