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『何か冷たい飲み物を持ってくる』
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と、キッチンに向かったアイリのことを座って待つ気力もなく、
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俺はTシャツとジョガーパンツに身を包んだラフな体を大の字に、
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アイリのベッドの上に仰向けに寝転んだ。
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レン
……今日は、マジで飲みすぎたな…。
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ぼそりと呟いて目を瞑れば、
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遊園地のコーヒーカップに乗った時みたいに、クルクルと回っている感覚が押し寄せてくる。
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レン
(気を抜いたら…、なんつーか、やべーな…)
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気分が悪いとかそういうわけではなく、
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理性がヤバい気がした。
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涼風の心地よさとベッドの柔らかさに身を委ねていると、たちまち眠気が襲う。
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レン
(もうこのまま眠ってしまおう…、でないと…、)
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レン
…俺が、俺でなくなる…。
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本能で感じた予感を回避する為にも、さらに意識を深めて眠りに入ろうとしたが、
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そこに、アイリがペットボトルを片手に戻ってきた。
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アイリ
お兄ちゃん、お待たせ、コレ——、
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レン
……
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アイリ
もしかして、寝ちゃったかな…?
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レン
…っ、……
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うっすらと眼を開いて、小声で気遣うように呟いたアイリの声を辿る。
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眠気を引きずる虚ろな俺の表情の俺を覗き込んだアイリは、
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緩やかな微笑みとともに優しい声色を降らせた。
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アイリ
良かったら、そのままここで寝る?
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アイリ
代わりに私がお兄ちゃんの部屋で寝るから大丈夫だよ。
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レン
……
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アイリ
そうする?
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視界を埋め尽くす、俺だけに向ける笑顔と温かい眼差し。
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レン
(……っ、)
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どくん、と。
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俺を揺り動かすように、鼓動が大きなうねりを見せた。
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酔いの力が追い風になって、
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抑え続けてきた我欲が外に染み渡る。
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レン
…、アイリ…、
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アイリ
ん、なに?
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レン
…———
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アイリ
っ、きゃ…っ、…!!?
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冷蔵庫から取り出して間もない良く冷えたペットボトルが、
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アイリの手から滑り落ちる。
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俺がその手首を荒く掴んだせいで、
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アイリの手の中で居座れなかったそれは、無抵抗に床上に転がった。
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アイリ
お、お兄ちゃんっ…!?
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レン
…、
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ほんの一瞬で、ベッド上にアイリを組み敷いた俺は、上からゆっくりと影を落とす。
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アイリ
ど、どうしたの…?
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レン
……
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平静を保とうと踏ん張るアイリに見せる俺の貼り付けた表情は無機質で、
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きっと意地悪なものに違いない。
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だからだろう、
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アイリ
ね、ねえっ、
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アイリ
お兄ちゃんってばっ…、
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アイリの双眸が、別人と化したような俺を捉えて萎縮したように震えていた。
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その柔らかな胸に触れなくても分かる、激しい鼓動。
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レン
……
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アイリ
…っ、
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俺の胸先を押し込んでくるアイリの両手は、
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互いの距離を確保しようと、衝立のように俺の理性を遮った。
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