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アイリ
ちょっ…、
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アイリ
お兄ちゃん、…?!
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レン
……
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眼を白黒させるアイリを無視して通話ボタンをタップし、シオンとの繋がりを断ち切ると、
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無造作にベッドの上に放り投げる。
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普段では考えられないその行動に、アイリはひどく狼狽えながら俺を見つめた。
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アイリ
ど、どうしたの、お兄ちゃん…、
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アイリ
今日はいつもより飲みすぎちゃった…?
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レン
…、いや…、
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アイリ
なんか…、ちょっと変だよ、
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アイリ
大丈夫?
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レン
…悪い、
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レン
確かに、かなり飲んだから…、
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レン
ちょっと頭のネジが2つ3つ飛んでるのかもしれねー…。
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苦く笑いながら、取り繕うように長めの前髪を掻き上げる。
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レン
……シャワー、浴びてくる…。
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アイリ
ちょっと待って、お兄ちゃん。
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レン
…なんだ?
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アイリ
もう少し酔いが醒めてからからのお風呂のほうがいいんじゃない?
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レン
…問題ねーよ。
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アイリ
でも、ちょっと心配だよ。
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憂う瞳が俺を包み込んで、
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今夜は特別、そんなアイリを妙に艶っぽく感じてしまう。
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レン
……
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緩く口角を引き上げると、スッと伸ばした指先でアイリの滑らかな頬に触れた。
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レン
そんなに心配なら、
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レン
一緒に入るか…?
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アイリ
な…、なに言ってんのっ…、
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アイリ
お兄ちゃんがヤバい人になっちゃった!
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揶揄 いを含んで苦笑交じりに言いながらも、両頬を赤く染めたこいつの面貌は、 -
俺が完全にいつもの状態ではないことを物語っている。
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レン
…顔、赤いんじゃねーか?
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アイリ
そんなことないっ、
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レン
……
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レン
(相変わらず、初心だな…)
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目の前の[#cnn=1#]を内心でこっそり蹂躙しながら、
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それとは相対的に穏やかな笑みを広げて見せる。
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レン
…つーのは、もちろん冗談だ。
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レン
大丈夫だから、おまえはもう寝ろ。
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微笑みを湛えたまま、酒気を含んだ甘ったるい溜め息を短く吐き出して。
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レン
…おやすみ、アイリ。
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まごつくアイリの頭をポンポンと撫でた後、
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兄貴らしく背を向けて、バスルームに向かった。
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︙
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シャワーを浴びれば少しはスッキリするかと思ったが、
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なかなかそうはいかない。
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体の表面は清々しい満足感を得られても、
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アルコールが十二分に満たされた体内は気怠く俺を支配した。
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タオルドライのみの濡れた髪をそのままに、のんびりとした足取りで自室を目指す。
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ようやく階段を上り切ったところで、
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アイリが俺の部屋から出てくるところを目に留めた。
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レン
…どうした?
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アイリ
あ、お兄ちゃん、
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アイリ
今、お兄ちゃんの部屋のエアコン付けておいたよ。
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アイリ
暑いとなかなか寝付けないだろうなと思って。
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レン
…そうか。ありがとな。
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気遣いに柔く目尻を細めて、首に巻いたバスタオルで髪を拭きながら自室に向かいかけたが、
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アイリ
そうだ、
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アイリ
お兄ちゃんの部屋が涼しくなるまで、私の部屋にいる?
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アイリ
エアコン、今付けたところだから、
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アイリ
たぶんまだ、部屋の中はとても暑いと思うし。
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レン
…、
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すれ違いざまにかけられた言葉に、ピタリと足を止める。
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レン
そんなに俺の部屋…、暑いのか?
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アイリ
うん、かなりね。
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アイリ
入った瞬間、熱気でモワッとしてたから。
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同情に苦笑いを添えたアイリを目にして、俺も力なく笑う。
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レン
(風呂上がりに暑いのだけは、勘弁してくれ…)
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それでなくても、酒が残る体は紅く火照っているというのに。
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レン
じゃあ、悪いが、少しだけ…、
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レン
おまえの部屋に居させてくれ。
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まるでガキのように項垂れた俺は、ちょっとした暑さに耐えることすら煩わしくて、
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なんの躊躇いもなくするりと要望を告げた。
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