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画だけ見れば、夏真っ只中の清々しい快晴。
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だが、実際は、ジリジリと照りつける太陽の光を受けた街はまるで灼熱地獄のように暑くて、
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雨乞いする蛙みたいに空を仰いでしまう。
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レン
この暑さ、やべーな…、
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レン
車のボンネットで目玉焼きが出来るぞ…
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自販機で買った冷たい缶コーヒーを手に、渋面でどうでもいい例え話を無意識に呟いた。
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この街の中心街に建つ美術館が改築されることになり、
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今回、それに関するプロジェクトに参加するために出張でこの地に出向いていた。
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美術館へと足を運んで先方の責任者との打ち合わせを終えた俺は、
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概略をまとめるために一旦支社に戻ろうとしていた。
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昨日、現地に着いた瞬間から、飯を食べる暇もなく動き回ることになってしまうのは
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連日行われてきた打ち合わせでなかなか折り合いが付かず、
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そのせいで皺寄せをくらった設計図面の納期が差し迫っているからだ。
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一緒に連れ立った同僚は、支社での会議に明け暮れて、生気を失った骸みたいになっている。
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つまり、俺や同僚は、これ以上滞ることなくプロジェクトを進行させるために
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本社が支社へ特別に派遣した助っ人というわけだった。
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たった3日間という短期間でどこまで出来るか分からないが、
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会社から信頼されている以上、できる限りのことはこなしたい。
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レン
…、よし、行くか。
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コーヒーを飲み干し、ダストボックスに放り投げる。
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ストライクを見届けてから、忙しさに追い討ちをかけるような暑さに辟易しつつ
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気合を入れ直すための深呼吸を小さく漏らした時だった。
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…あのっ、
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アイリのお兄さん…、
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レンさん、ですよね?!
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レン
…、!
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後方からの素っ頓狂な高音に驚いて、そちらを振り向く。
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思いがけない人物の登場に、目を見開いてその姿を見下ろした。
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レン
っ、サキちゃんじゃねーか!
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レン
…ちょっと待て。
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レン
なんでここにいるんだ…?
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サキの横に視線をずらせば、その傍らには恋人らしき青年。
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レン
(いや、おかしいだろ…)
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今日は、アイリの誕生日。
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レン
(当然、サキはアイリと海に出かけているはずだろ…?)
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レン
(つーか、)
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レン
(アイリの誕生日だから海に行こうって誘ったのは、サキ…、おまえじゃねーのかよ?)
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俺の中に次から次へと飛来する想念につい厳しい顔つきになってしまい、
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自ずと目の前の二人を睨んだように閉口する。
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*
…あの、実は——
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サキは、そんな俺の態度を目にして憚りながら、一つずつ疑問符を払拭してくれた。
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