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レン
…、そうだな…、
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レン
確かに、そうかもしれねえな。
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アイリ
うん、そうだよ…
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レン
(…ああ、その目は知ってる)
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真っ直ぐに射抜いてくるその瞳の奥には、
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いつもと変わらずに俺のことを信じ切っている光を宿していて。
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その煌めきは、俺に確固たる理性を植え付ける。
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アイリ
それに、
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アイリ
また地震が揺れたら怖いもん。
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レン
さっきの、結構デカかったからな。
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アイリ
お兄ちゃん、
早かったよね…、庇ってくれるの。 -
レン
そうか?
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アイリ
うん。
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アイリ
…、
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アイリ
…また、守ってくれたりする?
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レン
当たり前だ。
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レン
おまえは大事な…、妹だからな。
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アイリ
ふふ、嬉しいなっ。
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レン
……
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『妹』って言葉の裏に、
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実は深い恋慕が隠されているなんて、おまえは想像もつかないだろう。
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レン
…、
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俺が命懸けで守るのは、この世でただ一人。
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アイリという唯一無二の———妹。
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きっとアイリにとっての俺も、兄貴として唯一無二の存在であるはず。
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レン
なかなかいいだろ?
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レン
俺みたいな兄貴を持って。
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アイリ
自慢の兄貴だよ。
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レン
そうか。よしよし。
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レン
(こうなったら、兄貴というポジションを有効利用してやる)
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そう楽観的に開き直れるのも、
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今夜、些細なことでも一番近くでアイリを守れたからなのかもしれない。
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︙
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アイリ
ね、お兄ちゃん、後でコレやろ!
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レン
おまえ…、
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レン
こんな場所にまで、そんなもん持ってきたのか。
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アイリがバッグから意気揚々と取り出したのは、
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以前、一緒にやりたいとせがまれて二つずつ買い揃えたゲーム機とソフト。
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アイリ
朝まで『どう○○の森』やるぞー!
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レン
おいおい、少しは眠らせろよ?
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レン
今日も長距離を運転してここまで来たし、
明日も車で帰るんだからさ。 -
アイリ
え、少しだけね?
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レン
居眠りしたらどうするんだ。
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アイリ
大丈夫、
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アイリ
寝ないように、隣で見張っててあげるから。
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レン
できないことを言うんじゃねーよ。
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レン
すぐに隣で寝るくせに。
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アイリ
あ、バレてる。
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レン
バレバレだ。
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まだしばらくは、
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おまえの助手席の寝顔は俺だけの特権であってほしい。
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クスクスと笑うアイリの笑顔にほっこりさせられながら、静かに目元を緩めて思う。
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アイリ
分かった、
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アイリ
じゃあ、眠くなるまでね?
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レン
仕方ねーな…、
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レン
こんなにのんびりしたゲーム、今日に限っては速攻で寝落ちしたら許せ。
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いつもは仕事が忙しくてなかなかゆっくり付き合ってやることもできなかったが、
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今日こそは、できるだけの時間を費やしてやりたい…、
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心の内では、そんなことを思いながら。
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レン
じゃ、
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レン
とりあえず、先に佐山先生たちの様子見てから風呂入ってくるから、
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レン
それまでいい子で待ってろ。
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アイリ
うん、分かった!
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屈託のないアイリの笑顔は、俺にとってのカンフル剤。
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限られたひとときを徹夜で過ごすことになっても、
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迎える朝は、きっとすがすがしい。
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vol.4 END
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