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アイリ
もしも熱出してたら、
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アイリ
めっちゃ怒ったんだからね…。
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レン
俺はそんなにヤワじゃねーよ。
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アイリ
そうかもしれないけど…、
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アイリ
たとえ頑丈だったとしても、
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アイリ
お兄ちゃんがしんどい思いをするのは嫌なんだもん…。
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レン
……、
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どこか甘えるような愚図りみたいなその言葉に、胸がじわっと熱くなる。
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俺の行動全てに対して、ヤキモチのような感情を抱いてくれていたなら嬉しいと考えてしまっていた自分が、
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なんだかガキみたいで。
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レン
…ごめんな。
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レン
心配してくれてありがとな。
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アイリ
ううん…。
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アイリのその優しさに触れるだけでも特別なことなんだと、改めて実感した。
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アイリ
……お兄ちゃんの背中って、
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アイリ
広くてあったかいよね…。
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レン
そうか?
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アイリ
…ずっと、さ…、
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レン
? おう、
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アイリ
ずっと…、
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アイリ
私だけのものだったらいいのにな…。
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レン
…———えっ?
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アイリ
……———
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レン
アイリ?
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アイリ
———
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穏やかな寝息が、俺の肩に触れる。
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レン
……、
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嬉しい言葉を耳にした気がして、
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だが、深い眠りに落ちたアイリにそれをもう一度確かめるには手遅れで。
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レン
おやすみ…、
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レン
ほんと、いつもありがとな…。
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アイリ
———
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レン
……
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俺がおまえの兄貴でいることを辞めたら、
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アイリ、おまえはどう思うんだろうな。
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幼い頃から俺のことを本当の兄貴だと思っているおまえに、
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実は血が繋がってねーんだ…なんて、やっぱり言えるわけがない。
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レン
……、
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これからもずっと、
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おまえの前で、俺は兄貴でいるしかない。
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レン
……、それでもいい…、
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レン
(それでもいいから…、)
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兄貴という存在意義でもいい、
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これからも変わることなく、おまえのすぐ近くに居させてくれ、だなんて。
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俺は生まれて初めて何かに縋るように、強く祈りを込めていた。
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Vol. 2 END
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