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キザキさんの探偵事務所の建替工事が進む中、
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現場の進捗状況を見に行く彼について行くことになった。
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正確には、非番だった私がちょうど大学病院へ行く用事があったために
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車で送ってあげるから一緒に行こう…と誘われたからだ。
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ユヅキ
…、失礼します。
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バッグとノートパソコンを片手に、キザキさんが所有する車に乗り込む。
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事務所兼居宅が全焼したとき、
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キザキさんはこの車で寝泊まりして過ごそうと考えたらしい。
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大きなワンボックスカーなどではない、ステーションワゴンのシボレー。
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長期間過ごすには窮屈で、体への負担もハンパないのは想像に難くない。
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『つまらないこと考えないで、甘えられる人に甘えればいいんですよ』
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思わず口を突いて出た私の言葉に、キザキさんは嬉しそうに笑っていた。
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ユヅキ
……
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困っている人は放っておけないから。
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そこは、父親譲りな思考だと思う。
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…でも、もしも居候する人が、
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ユヅキ
(キザキさん以外の人、だったら…?)
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ある程度許容して、今のようにその人と関わっていたのだろうか。
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ユヅキ
…、
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そんな選択肢を勝手に散りばめては、
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考え込んでしまう日々が続いている気がする、今日この頃。
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