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正直、男慣れしていない堅物とも言える私でさえ、
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否応なく目に留めてしまうほどで。
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ユヅキ
(俗に言う、王子様みたいな人って、いるところにはいるもんだな…)
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ぼんやりと、そんなことが脳裏を巡った。
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……いや、そんなことよりも。
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ユヅキ
あの、どちら様ですか?
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キザキ
…僕?
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ユヅキ
はい、
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ユヅキ
(他に誰がいるんだ…)
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思わず内心で突っ込みながらも。
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自身の顎先を指差す謎の青年に向けて、ひとまずコクリと頷いて見せた。
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キザキ
城崎咲也(キザキサクヤ)です。
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キザキ
よろしくね。
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ユヅキ
……どうも。
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ユヅキ
(……ん、待って?)
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ユヅキ
(確か、うちの玄関先からこっちに来たよね?)
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ユヅキ
あの…父のお客様、ですか?
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キザキ
…名前、
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ユヅキ
え?
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キザキ
普通、名前って、相手に名乗られたら、
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キザキ
自分も名乗るものじゃないの?
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ユヅキ
あっ、すみません、私はーー、
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キザキ
そういうところ、素直だよね。
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ユヅキ
…、
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キザキ
藤沢柚月ちゃん、23歳。
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キザキ
その若さで、大学病院のお医者さん。
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ユヅキ
…――!
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いきなり霊視紛いに言い当てられて、ちょっとだけゾクリとする。
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ユヅキ
(え、何なのこの人——)
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<キザキ サクヤ>という固有名詞以外は全くの謎。
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キザキ
……、
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そんな彼はそっと口角を上げた後、
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少し楽しげな様子で目を細めて続けた。
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