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ユヅキ
元気そうだね。
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イシバ
……
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久しぶりに目にしたキョウヤの姿は
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相変わらず堂々とした佇まいの寡黙な青年で、
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こちらがにこやかに微笑みかけても、口端を僅かに上げた笑みのみで返される。
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ユヅキ
(…全然、変わんないなー)
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内心で苦笑しながらも、やっぱり長くご無沙汰していた友達に会えたことは嬉しくて、
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門から玄関までのアプローチを弾む気持ちで歩いた。
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ユヅキ
今日が休みで良かったよ。
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ユヅキ
仕事だったら会えないところだった。
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イシバ
そんな偶然があると思うか?
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ユヅキ
え?
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イシバ
1ヶ月ほど前から、
この日に帰国できるように調整していたからな。 -
ユヅキ
そうなんだ…、
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ユヅキ
…え、でもそれってさ、
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イシバ
おまえの勤める病院に、オフの日を問い合わせていた。
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ユヅキ
げ、マジで?
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イシバ
文句でもあるか?
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ユヅキ
文句っていうか…、
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ユヅキ
私に直接聞けばいいじゃん。
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イシバ
俺がおまえとL◯NEをする暇がなかったからだ。
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ユヅキ
そういう場合は、代わりに秘書さんに頼めばいいのに。
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イシバ
俺以外の人間が、
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イシバ
おまえに直接連絡を取ることが気に入らない。
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イシバ
秘書なら、病院側に問い合わせるだけで事足りる。
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ユヅキ
…なんだそれ。
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意味不明な理由に思わず呆れてしまいながら、頬を引き攣らせて苦く笑う。
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イシバ
ユヅキ。
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ユヅキ
なに?
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イシバ
しばらく見ないうちに、また綺麗になったな。
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ユヅキ
手入れは主に父がやってるから…、
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ユヅキ
父の得意分野なんだ。
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イシバ
……
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イシバ
……何の話だ?
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ユヅキ
え?
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ユヅキ
庭のガーデニングの…花のことじゃないの?
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イシバ
違う、
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イシバ
おまえのことだ。
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ユヅキ
……あ、そう。
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ユヅキ
てっきり花のことを言ってるのかと思ったよ。
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イシバ
相変わらず、自分の魅力に疎い奴だ。
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ユヅキ
失礼だな、
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ユヅキ
普通は自分のことなんかいちいち気にしないよ。
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軽く肩をすくめて言いながら玄関のドアノブを引くと、
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上り框で靴を履きかけているキザキさんが視界に映り込んだ。
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キザキ
あ、ユヅキちゃん、やっぱり外にいたんだ、
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キザキ
あのね——……、っ、
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いつものように笑顔を広げていたキザキさんだったが、
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言いかけた言葉を区切ったかと思うと、突然ロウ人形のように固まる。
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キザキ
……
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その視線は、私を飛び越えた先に注がれていて。
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ユヅキ
(…え、なになに、どうした?)
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その様がとても不思議で、私の後ろに立つキョウヤに振り返れば、
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彼もまた、同じように動きを止めていた。
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イシバ
……
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ユヅキ
え、なに?
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ユヅキ
二人ともどうしたの…?
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事由が全く把握できないまま、
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視線を交差させる二人の障壁になってしまっている私が立ち位置を横にずらすと、
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キョウヤがスッと一歩前に出た。
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イシバ
おまえは…、
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キザキ
イシバくんじゃない、びっくりだなあ。
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イシバ
驚いたのは俺の方だ。
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イシバ
こんなところでおまえに出会うことになるとはな。
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キザキ
…その口振り、
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キザキ
変わらないね、ほんとに。
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イシバ
何故おまえがここにいる?
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キザキ
イシバくんこそ、どうしてここにいるの?
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イシバ
俺はユヅキの友人で、
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イシバ
久しぶりに帰国したついでに会いに寄ったのだ。
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キザキ
…ふーん、そう。
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イシバ
それで?
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イシバ
おまえは何故ここにいる?
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キザキ
色々あってね。
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イシバ
色々とはなんだ?
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キザキ
教えない。
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冷笑に近い笑顔を滲ませるキザキさんと
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眉根に縦皺を作って訝るキョウヤを見ていると、
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どうやらこの二人はあまり仲が良さそうじゃない。
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というか。
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ユヅキ
あの、すごく奇遇だなって思うんですけど…、
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ユヅキ
二人とも、知り合いなんだ?
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彼らを交互に見ながら述べた素朴な質問に、
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こちらに顔を向けたキザキさんは私を視界に捉えた途端、
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瞳を柔らかなものに変えて続けた。
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