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キザキ
あはは、
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キザキ
社交辞令って、ビンゴでしょ?
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ユヅキ
ビンゴならなんです?
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キザキ
それでも、
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キザキ
ユヅキちゃんからの言葉は嬉しいからね。
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ユヅキ
…また、何を言って…、
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キザキ
それにしても遅かったね。
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キザキ
…はい、これ、どうぞ。
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ユヅキ
え…?
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畳み掛けるように言ったキザキさんは、
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私の頭上から肩先までをふわふわのバスタオルですっぽりと覆う。
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ユヅキ
(……、あったかい…)
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ちょっぴり凍えそうになっていたから、この気遣いは素直に嬉しい。
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キザキ
車で通勤してるのに、
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キザキ
ここまで雨に濡れるなんて器用だね、ユヅキちゃん。
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ユヅキ
…どうして濡れてるの分ったんですか?
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キザキ
僕の勘。
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タオルに手を伸ばしたキザキさんは、私の濡れた髪を優しく拭いながら笑った。
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ユヅキ
…別に、
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ユヅキ
これはたまたま濡れただけなので。
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キザキ
ふーん?
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ユヅキ
……
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タオル越しに、キザキさんの手が私の髪をたおやかに梳いてゆく。
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不思議と今は、そうされることが嫌ではなかった。
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キザキ
誰かに置き傘を貸したんでしょ。
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ユヅキ
…、
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ユヅキ
別に…、
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キザキ
図星だね。
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キザキ
僕の勘、すごいでしょ?
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ユヅキ
……
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キザキ
知らないよ?…風邪引いても。
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ユヅキ
大丈夫です、生まれつき頑丈なので。
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キザキ
医者の不養生って昔からよく言うけど、
キミも気を付けないとね。 -
ユヅキ
言われなくても分かってます。
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キザキ
これからは、
傘を2本用意しておいたほうがいいね。 -
ユヅキ
……
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バスタオルが覆う中で、眉を顰めて押し黙る。
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キザキ
ほんとユヅキちゃんって、気が良すぎるところがあるっていうか。
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キザキ
自分が風邪引いて苦しむことなんて、少しも考えないんだから。
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ユヅキ
…うるさいな、もう。
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キザキ
うん?
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ユヅキ
キザキさんにそこまで言われる筋合い、ないですから。
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憤りを孕んだ声音を遠慮なくぶちまける。
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ただ共同生活をしているというだけで、お互いにそこまで近い距離感でいるわけでもないのに、
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どうでもいいことをとやかく言われることに、カチンと来てしまった。
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