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サクラ
今日は、まだ仕事なんだ?
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ユヅキ
うん。
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ユヅキ
昨日運ばれたICUの患者さんの容態が気になるし、
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ユヅキ
安定するまで様子を見守ろうと思ってる。
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ユヅキ
帰りはたぶん…夜中になるかな。
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サクラ
そうなんだ…。
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サクラ
少し疲れてるようにも見えるけど…大丈夫?
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ユヅキ
へーきへーき。
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ユヅキ
回復した患者さんの笑顔を見るのが嬉しいから、めっちゃ頑張れるよ。
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サクラ
ユヅキ先生は、
どんなときも患者さん想いだから。 -
ユヅキ
私こそ、患者さんの笑顔に支えてもらってるんだよね。
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ユヅキ
教授たちから何かと睨まれる日常だから。
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サクラ
……、
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サクラ
…教授に、また何か言われたりしたの?
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ユヅキ
ううん、最近はわりと沈静化してるかな。
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サクラ
それならいいんだけど…、
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サクラ
違ったらごめんね、
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サクラ
やっぱりなんだかいつもより元気がないように見えるから……気のせい?
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ユヅキ
……、
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害のない嘘ですら器用に駆使できない自分は、
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こういうときについ答えを言い淀んでしまって困る。
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サクラの看護師としての人を見る勘なのか、友人としての勘なのか。
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その鋭さに、ちょっぴり焦った。
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ユヅキ
…気のせいだよ。
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不自然さを削り取る笑顔で、
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質問の答えをなんとか曖昧にしながらも視線は戻せずに、
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それ以降はしばらく無言で雨空を見上げる。
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ユヅキ
……
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言うまでもなく、
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サクラの推測は大当たり。
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元気がないように見えるのは、
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今までとは違って、キザキさんが絡んだ日常になってしまっているからだ。
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サクラはなんでも話せるくらいの友達だけど、
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家に突如現れた居候のことだけは話す気になれなくて。
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とにかく、キザキさんのことを口にするのが億劫だった。
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サクラ
…ユヅキ、先生?
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ユヅキ
ああ、ごめん、
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ユヅキ
なんでもないよ。
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ぼんやりしてしまっていたことを揉み消すようにそっと笑って、髪をくしゃっと掻き上げた。
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