Vol. 2 苛立ちのメカニズム ・6

  • キザキ

    夜の街って、昼間よりもリスクが多いからね。

  • ユヅキ

    …ご心配なく。大丈夫ですから。

  • キザキ

    どうして?

  • キザキ

    ソウタが一緒だから?

  • ユヅキ

    そういうわけではなくて。

  • ユヅキ

    いつも行ってるカフェですよ?

  • ユヅキ

    場所が場所だけに、一人でも問題ないということです。

  • キザキ

    行き慣れた場所だとしても、

  • キザキ

    女の子の夜遅くの遊びでの外出はオススメできないよ。

  • ユヅキ

    女の子って…、

  • ユヅキ

    もう子どもじゃないんですから。

  • 呆れたように反論した私に、キザキさんは肩を竦めて失笑に似た笑みを滲ませた。

  • キザキ

    だから、心配なんだけど?

  • ユヅキ

    …え?

  • キザキ

    キミが魅力的な大人の女性だから、普通に心配するんだけど?

  • ユヅキ

    そ…っ、

  • ユヅキ

    そういうこと、平然と言わないでもらえます?

  • キザキ

    どうして?

  • ユヅキ

    …なんか…、

  • ユヅキ

    調子、狂うので。

  • キザキ

    僕は思ったことを正直に言ったまでだよ。

  • ユヅキ

    ……

  • キザキ

    …、

  • キザキ

    僕のことが、気に入らない?

  • ユヅキ

    …、

  • ユヅキ

    いえ…。

  • 短い返事だけを示すのが精一杯で。

  • そう、きっと。

  • 最初に会った時から気に入らないから。

  • 否定という社交辞令だけで止めておかないと、色々と暴発しそうで。

  • ユヅキ

    …行こう、ソウタ。

  • ソウタ

    お、おう…。

  • わずかにたじろぐソウタの表情は紛れもなく、この張り詰めた空気に動揺を隠せない心の表れで。

  • それを申し訳なく思いながらも、

  • 今はキザキさんと視線を合わせない。

  • ユヅキ

    ……

  • キザキ

    ……

  • 広いリビングでひとりぼっちになるキザキさんを置き去りにして、

  • 私はソウタと共にその場を後にした。

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