13話:不可思議に映ったもの

 あれから暫くして、おれ達は高校生になった。
 別にだからといって何かが変わったわけでもなく、言ってしまえば、それこそ小学校の時から状況は余り変わっていない。それはつまり、単純にそれなりに平和だったのだ。
 幽霊には確かに何度も会った。会ったというか視た。害がありそうなその類いのものも何回か見た気がするけど、かといって特別何かをすることもしなかった。そう、おれはここに至るまで所謂"幽霊"という存在にそう多くは関わっていない。そのはずだ。
 拓真に知られてしまったことだって、そりゃ最初の出会いがあんなんだったら遅かれ早かれこうなっていただろうし、まあ、言ってしまえばそこまで気にはしていない。……というのは、流石に少し嘘が入るのだが。
 それでも、人が人の境遇を知るということは思っているよりも大きかったようで、あれから変に首を突っ込むということはよっぽどのことがない限りしなくなった。そう、よっぽどのことがない限り、だ。
 高校二年のあの日、とある人物と出会い、はじめて幽霊と人間という構図の複雑さを知るその時までは、良く言えば平均的な学生で、悪く言えばただ惰性的に歳を重ねていくだけの学生だったに違いない。

 ――今思えば、確かにあの時からここに至るまでにいくつかの疑問はあった。でも、この一連の流れが最悪の結果に至る必要があったのかという部分を考えると、それこそ疑問が残る。少なくとも半年ほどの時間を一緒に過ごしてきたにも拘わらず、それくらいおれは、もうここには居ない誰かのことを何も知らなかったのだろう。
 知る程の関係を築いていなかった? 知る権利がなかった? ……否、知ろうとしなかった、が恐らくは一番適切だろう。それを、「あの時もっとああすれば良かった」だなんて悲観することは簡単だ。
 だからといって、おれはそんなことはしたくない。このままだと、今後これら全ての話が、言い逃れの出来ないただの悲しい話というだけで終わってしまいかねない。それだけは、どうしても避けたかった。

『……彼も、同じようなことを言っていた』

 辛うじてそれを免れることが出来た理由のひとつとしては、この一連の流れの中にある何かしらに疑問を持ち、かつ後悔している人物がおれの他に存在していたからだろう。

『その話、詳しく聞かせてはくれないか?』

 これは、おれというひとりの人物が高校二年生になってから、三年生が終わりを迎えようとしている今この瞬間に至るまでに起きた出来事を、ただ単に羅列させただけの話。
 全てはきっと、最初から決まっていたのだと思わせたいが為の、面白味もない単純な物語だ。
1/3ページ
スキ!