第17話:孤独に別れを告げられない

 ――この日は、とても静かだった。
 落ちる日の光粒を眺め、特に何をするでもなく誰も居ない庭を静観するだけの時間を送っていた。時に昔のことに思いを馳せ、それがまるで現実であるかのような錯覚に陥りながらもそれに疑問を抱くことなく、考える余地もないほどの居心地の良さに胡座をかいていた。こればっかりは否定のしようがないだろう。

『……そんなところに立っていないで、入ったらどうだい?』

 シント君が再びこの家に足を踏み入れるその時までは、私は私が何者であるのかというのを理解していなかったのだ。
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