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カイジ夢



「カイジさん、これってどこに置けば良いですか?」

最近コンビニに新しいバイトの子が入った。
俺は人付き合いが苦手ではあるが、相手から質問を聞かれたら答えるしか無い。

「あー……それはあっち、重いから俺が運んどくから。」

今日はもう上がりで、俺と彼女はもう私服に着替えている。しかし、帰る前にゴミ捨てをして欲しいと店長に頼まれた。でも、彼女にじゃなくて、俺に。店長はいつもゴミ捨てなどの雑用を俺に押し付けようとする。だが、この子は頼まれてもないのに進んでそんな作業も取り組んでくる。女子で重いゴミ運びを率先的にやるなんて、どうかしてる。俺は気になって聞いてみた

「……あのさ、雑用とか、こういう面倒くさい作業なんで率先的にやるんだ?重いし、負担だろ。」

「だって、カイジさんと話せるきっかけになるし……」

「……はぁ!?」

代わりに運ぼうとゴミ袋を持ち上げていた手が緩んでゴミがどさりと床に落ちた。それって、俺の事が……

「好きなんです、カイジさんの事」

冷たい星空の下に、2人。
彼女の言葉は俺たちの空間を止めた。
俺はハッとし、言葉を紡いだ。

「なに冗談言ってんだよ、俺のこと気になる要素なんて……」

「こういった雑用とか文句も言わず進んでやってくれるし……それにカイジさんの目とか、あと……」

彼女は俺の目を覗き込んできた。彼女の潤んだ瞳に心がざわつく。

「どん底から一発逆転、切り抜けられるような……強いギャンブラー精神を感じるんです。」

彼女が俺を見据える。俺のことを観察してるような、そんな瞳だ。

「好きです、前から。ずっと。」

そう言い切ったあと彼女は我にかえったのか、突然顔を赤くし、手で覆い隠した。

「すみません、突然。でも本当に、好きです」

「俺も好きだよ。」

「え」

「っていったらどうする」

彼女が驚いた顔で覆い隠していた手を仕舞う。
俺はさっきの仕返しとばかり、彼女を上から見下ろすように見つめる。

「俺がお前を好きか嫌いか、賭けてみろよ。」

まくし立てるように言葉を続ける。
彼女は俺をギャンブラー精神だとか言ったが、彼女にもそんな一面があるからそんな事を言ったのではないか。そうならば、俺もそんな彼女の一面に賭けてみた。

「好き、だと嬉しいです。」

「それじゃ賭けじゃないだろ、願望だ。」

「う……カイジさんは、私のことが、好き」

不安そうに俺の顔を見つめてくる。もうすこし虐めたくなったが、流石に可哀想なので辞めよう。

「お前の勝ちだよ。ずっと前からな。」

「それってつまり……」

「自分で考えろ、俺の家はこっちだから。」

「カイジさん……!待って!」

「……着いてくれば勝ちの景品があるかもな。」

「景品っ、知りたいです」

「……朝まで寝かせねえ」

俺は彼女に振り返り、意味を含みながら笑う。
彼女が着いてくるか来ないかは、俺の賭けだ。

そして、次の日、彼女が初めてアルバイトに遅刻した。その本当の理由を知るのは俺のみであった。

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